口腔機能低下症って何?症状や検査方法、対策について

[2024年06月11日]

【目次】
◯機能低下症とは
◆口腔機能低下症の対象
◆口腔機能低下症とオーラルフレイル
◯口腔機能低下症の診断方法
◆口腔機能低下症の診断 ①口腔衛生
◆口腔機能低下症の診断 ②口腔乾燥
◆口腔機能低下症の診断 ③咬合力低下
◆口腔機能低下症の診断 ④舌口唇運動機能低下
◆口腔機能低下症の診断 ⑤低舌圧
◆口腔機能低下症の診断 ⑥咀嚼機能低下
◆口腔機能低下症の診断 ⑦嚥下機能低下
◆口腔機能低下症の診断結果
◯口腔機能低下症を進行させないようにするには
◯まとめ

 

口腔機能低下症とは

加齢により徐々に身体機能が衰えてくると、お口の中にも症状が現れることがしばしばあります。もちろん加齢だけが原因ではなく、全身疾患や障害などいくつかの要因によりお口の機能が低下していきます。以前と比べて食事が咬みにくい、むせやすい、食事の時間がかかってしまうといった症状が代表的です。口の機能低下は後に摂食・嚥下障害や咀嚼障害を引き起こし、さらには低栄養や誤嚥性肺炎など命にかかわる問題になることもあります。

口腔機能低下症の対象

口腔機能低下症は2018年の診療報酬改訂で導入された病名で、比較的新しいものです。患者さんの中には初めて聞く方もいるかもしれません。2022年の改定によりこの対象が50歳以上になりました。歯科医療機関において7項目の口腔機能評価を行い3項目以上で機能の低下が認められた場合に診断されます。これにより口腔機能低下の早期発見・早期治療を行います。従来のような歯周病や入れ歯の治療に追加した改善治療を行うこととなります。

口腔機能低下症とオーラルフレイル

口腔機能低下と似たような言葉にオーラルフレイルというものがあります。オーラルフレイルはむせや食べこぼしなど口腔機能が低下した状態を示しています。単に口腔内の機能低下だけではなく、高齢期になり起こる社会的・精神的問題や栄養の問題などが複合して生じる老化も含まれています。高齢者の生活を反映したモデルでありいくつかのレベルが存在します。それに対して口腔機能低下症は検査に基づく疾患名です。どちらとも同じような状態を指す場合もあり、明確に区別されていないこともあります。

 

口腔機能低下症の診断方法

口腔機能低下症の診断には以下の7つの項目があります。
①口腔衛生
②口腔乾燥
③咬合力低下
④舌口唇運動機能低下
⑤低舌圧
⑥咀嚼機能低下
⑦嚥下機能低下
①②は口腔内の評価、③④⑤は個別的機能評価、⑥⑦は総合的機能評価になります。どのように検査をするかを確認しましょう。

口腔機能低下症の診断 ①口腔衛生

口腔衛生状態は舌で評価を行います。舌苔という舌の表面にある汚れを確認しスコア化します。舌表面を9つに分けて、汚れが50%以上ついている場合には口腔衛生不良となります。

口腔機能低下症の診断 ②口腔乾燥

口腔乾燥も舌で評価を行います。舌表面に水分計という器具をあてがって計測します。その他には唾液の分泌量を確認するサクソンテストというものがあります。乾燥したガーゼを2分間かみ、染み込んだ唾液の重量を評価して確認します。

口腔機能低下症の診断 ③咬合力低下

咬合力は感圧フィルムという特殊なフイルムを咬み、それを機械で読み取ることにより判断します。その他には残っている歯による評価もあります。根っこだけ残っている歯や揺れが強い歯を除いて歯がどの程度残っているかを確認して評価をします。

口腔機能低下症の診断 ④舌口唇運動機能低下

舌口唇運動機能はオーラルディアドコキネシスというもので評価をします。これは規定の秒数の間に何回『パ』『タ』『カ』が言えるかを数えるものです。パは口唇の運動機能、タは舌前方の運動機能、カは舌後方の運動機能を確認するために行います。

口腔機能低下症の診断 ⑤低舌圧

舌圧の機能評価には舌圧計というものを使用します。むせや流涎、食べこぼし、低栄養のリスクがある方はない方と比べて舌圧が低かったという研究結果もあります。

口腔機能低下症の診断 ⑥咀嚼機能低下

咀嚼機能はグミゼリーを用いた検査法や咀嚼能率スコア法による検査があります。前者はグミを咬んだ後に出るグルコースの溶出量を機械で測定する方法です。後者はグミを咬んだ後にどの程度細かく咬むことができたかを確認する方法です。

口腔機能低下症の診断 ⑦嚥下機能低下

嚥下機能はスクリーニングのための質問用紙などがあります。この際に既に嚥下機能が低下している場合には、嚥下機能のスクリーニング検査や内視鏡検査などの検査が必要になることがあります。

口腔機能低下症の診断結果

先にも記載しているように7項目中、3項目以上が該当すると口腔機能低下症と診断されます。この結果からわかることは低栄養状態になっている可能性が高いということです。低栄養は高齢者において起こる可能性が高い事象です。低栄養はオーラルフレイルの内容の一つとして挙げられています。オーラルフレイルの方は死亡リスクが高まることや要介護になりやすいことが研究で示されています。口腔機能低下症と診断された場合には早期に対策を行うことが大切です。

 

口腔機能低下症を進行させないようにするには

口腔機能低下症と診断された場合には、それらに対応する口腔体操などいくつかの改善方法があります。特に個人レベルで行うのは口腔体操が主になるでしょう。具体的には唾液腺マッサージ(耳の前:耳下腺マッサージ)、『パ・タ・カ』を発音する練習、舌鳴らし(舌の運動)、空気を吸い込んで頬を膨らませる練習などが挙げられます。残っている歯や使用中の入れ歯の不具合は早めに治療しておくことが大切です。咀嚼機能の向上に寄与します。

 

まとめ

口腔機能低下症について確認してきました。対象は50歳以上からとなっており、検査もいくつかあります。今まで経験のない検査もあるので歯科医院で行うことに戸惑うこともあるかもしれません。しかし、これらは早期にオーラルフレイルを発見し、改善治療を行うための検査です。オーラルフレイルは無自覚のまま進むこともあります。自分では大丈夫と思っても50歳以上になった場合にはこのような検査を受けて、フレイル状態になりにくい健康状態を維持するようにしましょう。



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