なぜ、歯医者はこんなにも多いのか?

[2026年07月28日]

◯目次

  • ◯はじめに
  • ◯どうして歯科医院の数は多いのか
    •  ◆歯科医院の歴史
    •  ◆歯科医院の新規開業が容易になった
    •  ◆歯科大学の新設
  • ◯現在の歯科医院の数
    •  ◆歯科医師国家試験の難易度が上がったため
    •  ◆歯科医師の高齢化と後継者不足
    •  ◆患者の高齢化
  • ◯まとめ

◯はじめに

歯科医院がなぜここまで増えたのか、その理由を解説しています。歯科医院は街にたくさんありますが、実は近年、歯科医師数自体は減少傾向にあります。現在の歯科医師を取り巻く状況や、それによってどのような課題が生じているのかについてもあわせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

あなたの住んでいる街を見渡してみると、あちらにもこちらにも歯科医院があることに気付くのではないでしょうか。
「歯科医院はコンビニより多い」と言われて久しいですが、実際のところはどうなのでしょうか。

令和6年2月時点では、全国の歯科診療所は66,843施設、一方でコンビニエンスストアは約57,000店舗とされており、実際に歯科医院のほうが多い状況です。

では、なぜここまで歯科医院が増えたのでしょうか。また、近年は歯科医院の閉院や後継者不足といった話題も耳にしますが、その背景にはどのような事情があるのでしょうか。

今回は、歯科医院が増えた歴史や現在の歯科医療を取り巻く環境について分かりやすく解説します。普段はあまり知られていない歯科業界の事情を、ぜひ楽しみながらご覧ください。

◯どうして歯科医院の数は多いのか

街中に歯科医院が数多くある理由には、過去の国の政策や歯科医療を取り巻く社会情勢が大きく関係しています。しかも、多くの歯科医院は予約が埋まっていることも珍しくありません。

ここでは、歯科医院が増えた主な理由について解説します。

◆歯科医院の歴史

現在、日本では人口10万人当たり約80人の歯科医師がいるとされており、比較的多い水準となっています。しかし、昭和初期には人口10万人当たりの歯科医師数は30人台で、現在の半分以下しかいませんでした。

当時は歯科医療を必要とする人に対して歯科医師が不足していたため、政府は昭和44年(1969年)に「人口10万人当たり歯科医師50人」を目標として掲げ、歯科大学や歯学部の新設を認可しました。

その結果、多くの歯科大学が設立され、目標としていた人口10万人当たり50人の歯科医師数を達成します。その後も歯科医師は増え続け、平成22年末には歯科医師数が10万人を超え、現在では人口10万人当たり約80人という水準になりました。

一方で、かつては歯科医師不足が課題だったものの、その後は歯科医師の供給過剰が指摘されるようになり、現在の「歯科医院が多い」といわれる状況につながっています。

◆歯科医院の新規開業が容易になった

昭和末期までは、歯科医院を新しく開業するハードルは現在よりも高いものでした。医療広告に関する規制が厳しく、看板や電話帳以外で医院を宣伝することは原則として認められていなかったため、新規開業しても患者さんに知ってもらうことが難しかったのです。

また、医療法人化の条件も厳しく、分院展開やグループ化が容易ではありませんでした。さらに、当時の歯科医療機器は非常に高額であり、若い歯科医師が資金を借りて開業することも簡単ではありませんでした。

しかし、平成に入ると規制緩和が進み、開業しやすい環境が整えられました。医療法人制度の見直しや設備投資のしやすさなども後押しとなり、多くの歯科医師が診療所を開業するようになります。

さらに、日本の国民皆保険制度によって患者さんが比較的少ない自己負担で歯科治療を受けられる環境が整っていたことも、歯科医院の需要を支える要因となりました。こうした背景から、全国的に歯科医院の数は大きく増加していきました。

◆歯科大学の新設

1960年代後半から1980年代初めにかけては、全国各地で歯科大学や大学の歯学部が次々と新設されました。

これは、当時不足していた歯科医師を確保することが目的であり、歯科医師の養成数を増やす政策が進められた結果です。

その後、卒業した歯科医師の多くが全国で開業したことから、地域ごとに歯科医院が増加しました。現在でも住宅街や駅前など身近な場所に歯科医院が多いのは、この時代に歯科医師が大幅に増えたことが大きく影響しています。

◯現在の歯科医院の数

コンビニよりも多いといわれる歯科医院ですが、実は近年では歯科医師数・歯科医院数ともにピーク時から減少傾向にあります。今後は、地域によって歯科医師不足の時代が訪れる可能性も指摘されています。

では、かつては「歯科医院が多すぎる」とまでいわれていた状況から、なぜ減少へ転じているのでしょうか。ここでは、その背景について解説します。

◆歯科医師国家試験の難易度が上がったため

歯科医師国家試験の合格者数は、2013年頃までは年間2,300人前後で推移していましたが、その後は年間2,000人前後まで減少しています。

その背景には、国が歯科医師の供給過剰を課題と捉え、国家試験の合格基準を厳格化したことがあります。その結果、新たに歯科医師となる人数が減少し、以前のように歯科医師数が増え続ける状況ではなくなりました。

現在では、新規に歯科医師となる人数よりも、高齢による引退などで現場を離れる歯科医師が増えつつあり、全体として歯科医師数は横ばいから減少傾向となっています。

◆歯科医師の高齢化と後継者不足

現在、歯科医師の年齢構成を見ると、60代が最も多く、次いで50代となっています。また、70代以上でも現役で診療を続けている歯科医師は珍しくありません。50代以上の歯科医師が全体の半数以上を占めている状況です。

歯科医師の高齢化に伴い、体力面や健康上の理由から引退や閉院を選択するケースも増えています。

一方で、20代・30代の若い歯科医師は相対的に少なく、世代交代が十分に進んでいません。後継者が見つからないため、患者さんが多く通う歯科医院であっても閉院を余儀なくされるケースが増えています。

◆患者の高齢化

日本では少子高齢化が進み、超高齢社会を迎えています。そのため、歯科医院を受診する患者さんも高齢者の割合が高くなっています。

高齢者では虫歯や歯周病の治療だけでなく、訪問歯科診療口腔機能の維持・管理、誤嚥性肺炎の予防など、幅広い歯科医療が求められるようになっています。

歯科医師数が減少する一方で、高齢化に伴う歯科医療の需要は今後さらに高まることが予想されています。そのため、地域によっては必要な歯科医療を提供する人材が不足する可能性も考えられます。

◯まとめ

歯科医院が街に多い理由は、かつて歯科医師不足を解消するために歯科大学の新設が進められ、歯科医師の養成数が大きく増えたことが背景にあります。その結果、全国各地で多くの歯科医院が開業し、「コンビニより多い」といわれる状況になりました。

歯科医院が多いことは、患者さんにとって通いやすい医院を選びやすく、待ち時間の短縮や予約の取りやすさなど、多くのメリットがあります。

一方で、現在は新たに歯科医師になる人数が減少していることに加え、歯科医師の高齢化や後継者不足も大きな課題となっています。今後は地域によって歯科医院が減少し、予約が取りにくくなる可能性も考えられます。

さらに、高齢化が進む日本では、訪問歯科診療や口腔機能管理など、高齢者に対する歯科医療の需要は今後も高まると予想されています。都市部と地方の地域差をできるだけ小さくし、誰もが必要な歯科医療を受けられる体制を維持していくことが、これからの大きな課題といえるでしょう。



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