口育とは何か?それが大事とされる理由とは?

[2026年03月21日]

◯はじめに

口育という言葉を耳にしたことはありませんか?
口を育てると書いて「こういく」と読みます。
口育は、私たちの「お口」が担っている「息を吸う」「食べ物を噛む」「食べ物を飲み込む」「言葉を話す」などのさまざまな働きの成長発育を正しくサポートすることです。

わざわざそんなことする必要ないと思われるかもしれませんが、医学の発達により、お口の成長発育が十分でないケースが明らかになり、それに伴うさまざまな悪影響も分かってきました。
今回は、口育についてご紹介します。
この記事を最後までお読みいただくと、口の成長発育が不十分な場合の影響や、口育の方法などがお分かりいただけると思います。

◯目次

  • ◯口育が大事な理由
  • ◯成長不足がお子さんに与える影響
    •  ◆機能面での影響
    •  ◆骨格や歯への影響
  • ◯年をとってからの影響
    •  ◆誤嚥性肺炎
    •  ◆胃ろう
    •  ◆体の自由が失われる
  • ◯口育の方法
    •  ◆乳児
    •  ◆幼児以降
    •  ◆中高年以降
  • ◯まとめ

◯口育が大事な理由

口育が大切な理由は、お口が本来持っている働きの低下を防げるからです。
お口には冒頭でお話しした通り、さまざまな働きがあります。

それらは、口腔周囲筋という舌筋や頬筋、オトガイ筋などのお口のさまざまな筋肉の働きによって得られるのですが、お口の働きは、生まれながら備わっているものばかりではありません。
成長とともに獲得していく働きもたくさんあります。

口育は、口腔周囲筋を理想的な状態に成長させ、お口が備えている本来の働きを十分獲得できるようサポートします。
その効果は、生涯にわたる心身ともに健康な体づくりにつながるので、口育はとても大切なのです。

成長不足がお子さんに与える影響

口腔周囲筋の成長が足りない場合、お子さんには次のような影響が現れます。

◆機能面での影響

口腔周囲筋の発達不足の影響は、まずお口の機能に現れます。

▶︎口呼吸

私たちの体は、鼻で呼吸するようにできています。
口からも息をすることはできますが、それは本来の呼吸ではなく、健康や歯並びに悪影響をもたらします。

口腔周囲筋の、特に舌筋の発達が不十分な場合、口呼吸を引き起こしやすくなります。

▶︎食べこぼし

お口の中で食べ物を噛んでいるとき、お口から漏れ出すお子さんがいます。
これは、食べている間に口輪筋がしっかりとお口を閉じていないからです。

口腔周囲筋の発達不足は、食べこぼしのような日常的なマナー面にも影響します。

▶︎不明瞭な発音

はっきりと発音するには、舌筋などの口腔周囲筋の働きが欠かせません。
口腔周囲筋の成長発育が足りない場合、舌足らずな発音になってしまう可能性があります。

◆骨格や歯への影響

口腔周囲筋の発達不足は、顎の骨格や歯並びなどにも影響します。

▶︎顎の縮小

顎の骨格の成長発育は、”噛む”という動作の刺激によって促進されます。
小さい頃から食べるときにあまり噛まないで育つと、顎の骨格が十分に成長できません。

顎の大きさが小さいと、顔の見た目のバランスが悪くなるだけではありません。
顎が小さくなっても舌の大きさは変わらないので、舌が喉を圧迫し、空気の通り道である気道を狭くします。

すると、呼吸に支障をきたすようになり、口呼吸になりやすくなるだけでなく、酸素不足につながり、学習や運動能力にも影響を及ぼす可能性があります。

▶︎歯並びの悪化

口腔周囲筋の影響は、歯並びにも及びます。
よく知られているのが、舌筋です。

舌筋が弱いと舌が全体的に下がってしまいます。
舌が下がると、下の前歯が前方に押されるため、受け口になったり、上下の前歯が噛み合わない開咬という歯並びになったりします。

このほか、すきっ歯の原因にもなることがあり、口腔周囲筋がしっかり発達していないと歯並びが悪くなってしまいます。

◯年をとってからの影響

お口の成長不足がもたらす影響は、子供のときだけではなく、年齢を重ねてから現れるものもあります。

◆歯の喪失

歯並びが悪いと噛み合わせが悪くなるだけでなく、歯磨きも難しくなります。
すると、虫歯や歯周病のリスクが高まり、抜歯になる可能性も高まります。

抜けた歯が増えて入れ歯になると、噛みにくくなるだけでなく、入れ歯の支えに使っている歯の負担が増し、歯がダメになってしまうこともあります。
口育で歯並びの悪化が防げるかどうかで、将来的な歯の寿命が変わってきます。

◆誤嚥性肺炎

誤嚥は、食べ物や飲み物をうまく飲み込めず、気管の方に流してしまうことです。
舌筋の働きが弱いと起こりやすいですが、歯の数が減りしっかり噛めなくなったり、入れ歯になって汚れが残りやすくなったりすることも発症のリスクを高めます。

誤嚥は誰にでも起こり得るのですが、高齢者の方が誤嚥を起こすと、免疫力がすでに低くなっている場合、容易に肺炎に進んでしまいます。

小さな頃からの口育で口腔周囲筋をトレーニングし、顎の骨格や歯並びを整えておくことは、高齢になってからの誤嚥性肺炎のリスクを減らしてくれます。

◆胃ろう

胃ろうは、胃に小さな開口部を作り、そこから栄養を摂取する医療処置です。
食べるためには口腔周囲筋の働きが大切です。

若い頃には気にならなかったとしても、口腔周囲筋の発達が足りないと、年とともに次第に食事に要する負荷が現れ、食べられなくなっていきます。

食べられなくなると現状では選択肢が限られることが多く、多くの場合胃ろうが選ばれます。
ここにも、小さい頃からの口育が関係しています。

◆体の自由が失われる

お口の機能が低下すると、食べられなくなることから、栄養が不足し、全身の筋力も減少します。
すると、さらに食べられなくなるという悪循環に進みかねません。

この状態が続くことで、身体機能が徐々に低下し、寝たきりになる可能性が高まっていきます。

◯口育の方法

最後に、口育の方法についてお話しします。

◆乳児

口育は、赤ちゃんの頃から始めるのが理想的です。
歯が生える前は、お口のケアなどを通して、お口の筋肉を少しずつ刺激して鍛えます。

また、哺乳や離乳食の食べ方なども口育では重視して確認していきます。

◆幼児以降

口腔周囲筋の発達度合いを口呼吸の有無や話し方、噛み方、食べ物の好みなどから判断し、症状に合わせ適切な口腔周囲筋のトレーニングを行います。

また、指しゃぶりや爪を噛む癖など、歯並びに影響を与える癖の有無もチェックします。

◆中高年以降

中高年以降は、口育の”育”という文字のイメージからは少し離れますが、口腔周囲筋の大切さは変わることがありません。

中高年以降になると、口腔周囲筋の筋力が少しずつ減っていきます。
減り始めはなかなか気づかないものですが、むせる回数が増えるなど、徐々に筋力の衰えに気づくサインが現れます。

そのような場合は、口腔周囲筋を強くするエクササイズがおすすめです。
エクササイズの方法はいくつかありますが、比較的取り組んでいただきやすいのが、”あいうべ体操”です。

◯まとめ

今回は、口育についてお話ししました。

口育が大切とされる理由は、口腔周囲筋が適切に発達しないと、それが元で”食べる””息をする””飲み込む””話す”などの生きていく上で必要な働きが十分に発揮できなくなるからです。

口育を通して口腔周囲筋をトレーニングすると、口呼吸や食べこぼしを防いだり、発音をよくしたりするだけでなく、顎の骨格や歯並びにも良い影響が出ます。

そして、小さいころからの口育は、年をとってから誤嚥性肺炎や胃ろうのリスクを減らすことにもつながっていきます。



mapを見る

電話をかける