子どもの顎の骨格のバランスを整える拡大装置を使った歯列矯正

[2023年06月20日]

こんにちは

子供の歯列矯正では、大人にない子供の特性、すなわち成長発育を利用した治療が行われます。

そのひとつに拡大装置を使った歯列矯正があります。

拡大装置は、その名前の通り拡大させるための矯正装置です。

何を拡大させるのか、それは顎の骨格です。

拡大装置を使った歯列矯正は、どのような目的に行われ、どのようにして顎の骨格を大きくするのでしょうか。

そこで今回は、拡大装置を使った歯列矯正についてお話しします。

 

拡大装置について

まず、拡大装置についてご説明します。

 

拡大装置とは

ヒトの成長発育は、遺伝と環境の影響を受けます。

環境とは、お口に関して言えば、成長途中での食事や発声、呼吸などの発達を言います。

遺伝的な影響は変えることはできませんが、環境は整えることができます。

環境を整えれば、望ましい成長が得られます。

拡大装置は、発育環境を整えることで、顎の成長発育を後押しし、理想的な顎の形になるようにするために開発された矯正装置です。

 

拡大装置の目的

歯列不正の多くは、歯の大きさと歯が並ぶ顎の骨のスペースのバランスが取れていないことが背景にあります。

歯と顎のバランスが取れていない場合、選択肢は顎の骨を大きくするか、歯を小さくするかしかありません。

拡大装置には前者の顎の骨を大きくする効果があります。

顎の骨格を大きくすることができれば、永久歯になってから歯を抜かなくても歯をきれいに並べられるようになる可能性が生まれます。

顎の骨を大きくすることで、歯を並べるスペースを確保することが、拡大装置の目的です。

 

拡大装置による治療が適している時期

子供の歯列矯正は、大人の歯列矯正と異なり、第1期治療と第二期治療に分けて行われます。

第1期治療は混合歯列期という乳歯から永久歯へと生え変わっている時期が対象です。

一方、第二期治療は、永久歯列期という乳歯が全て抜けて永久歯に生え変わった時期に行われる歯列矯正です。

拡大装置を使って顎の骨のサイズを大きくする治療が行われるのは、成長発育が旺盛なときです。

すなわち、第1期治療のときです。

 

拡大治療の限界

拡大装置を使えば、いくらでも顎の骨を大きくできるかというとそうではありません。

拡大装置の作用の限界は、実は下顎骨によって決まります。

具体的には、下顎の歯の内側への傾き度合いなどです。

 

拡大装置の種類

拡大装置にはいろいろなタイプがあります。

代表的なタイプについてご紹介します。

 

急速上顎拡大装置

急速上顎拡大装置は、上顎骨の拡大に使う拡大装置です。

上顎の左右2本ずつ、合計4本の歯にバンドをつけて、そこを支えにして上顎骨の中央部にある正中口蓋縫合という骨の合わせ目を広げて、上顎骨の横幅を大きくします。

支えの歯につけるバンドは接着剤をつけてくっつけるので、取り外しはできない固定式になります。

なお、支えに使う歯は、永久歯だけでなく乳歯を使うこともあります。

急速と名前についているように、拡大のスピードが速いうえ、横幅だけでなく前方への拡大も可能なのが利点です。

一方、歯磨きがしにくいので歯肉が腫れやすい、装置の違和感が大きいという難点もあります。

 

クワドヘリックス

クワドヘリックスは、上顎骨の拡大に使います。

第一大臼歯(6歳臼歯)にバンドを接着し、そこからのびたワイヤーの働きで上顎骨の拡大を図る固定式の拡大装置です。

クワドヘリックスは、拡大のスピードが速い上、第一大臼歯の捻転(ズレの一種)も改善できるのが利点です。

一方、バンドの内側にシースという金具をつけるスペースが必要であること、舌や指で触ると変形しやすいことなどが難点です。

 

シュワルツの拡大床

シュワルツの拡大床は、上顎骨だけでなく下顎骨の拡大にも使われる拡大装置です。

上顎の歯の内側の広い面積を覆うレジンというプラスチックで作られた2分割された床と呼ばれる部分と、左右の床を繋げる拡大ネジで作られています。

取り外しができる可撤式拡大装置です。

ネジを回すことで、上顎骨を大きくするわけですが、ネジの位置を変えることでさまざまな歯も同時に移動できます。

加えて、可撤式なので食事などの日常生活に影響が出にくい、使えない子供はほぼいないなどの利点もあります。

一方、拡大のスピードが遅い、歯の並びに並行にしか拡大できないのが難点です。

 

クレアCLEA(Clear Expansion Appliance)

クレアは、上顎骨、下顎骨どちらの拡大にも使える拡大装置です。

プラスチック製のベースとワイヤーで作られている床タイプの拡大装置ですので、取り外し可能な可撤式です。

このワイヤーの弾力性によって顎の骨の拡大を図ります。

取り外し可能なので、食事や歯磨きなど日常生活に影響しにくい上、装置のお手入れも簡単です。

また、歯を押し下げることもできる上、使えない子供もほとんどいないという点も利点です。

一方で、拡大量の調整が難しい、歯ぎしりの癖があると壊れやすいなどの難点もあります。

 

リンガルアーチ

リンガルアーチは、下顎骨用の拡大に使います。

第一大臼歯に金属製のバンドを装着し、そこから伸ばしたワイヤーの働きで下顎骨の拡大を図る固定式の拡大装置です。

クワドヘリックスの下顎版といった拡大装置です。

第一大臼歯の捻転の改善ができること、歯の内側への傾きを治せること、拡大のスピードが速いことなどが利点です。

反面、使い始めは拡大作用による痛みが生じやすい、固定式なので食事や歯磨きがしにくいなどの難点もあります。

 

まとめ

今回は、小児矯正で使う拡大装置についてお話ししました。

拡大装置には、さまざまなタイプがありますが、分類すると『上顎用・下顎用』『固定式・可撤式』になります。

上顎用固定式は『急速上顎拡大装置』『クワドヘリックス』

上顎用可撤式は『シュワルツの拡大床』『CLEA』

下顎用固定式は『リンガルアーチ』

下顎用可撤式は『クレア』

ですね。

拡大装置は、顎の骨の成長発育を促して、顎の骨格のバランスを整えることを目的としていますが、トラブルがないわけではありません。

拡大装置による治療が適しているのか、適しているとしてどのタイプがいいのかなどをしっかりと診断しなければ、効果がないだけでなく、かえって歯並びが悪くなることもあります。

当院は、子供の歯列矯正の専門知識に加え、長年にわたる豊富な治療経験を持つ歯科医院です。

お子さんの歯並びを悩んでいる方、拡大装置による治療にご興味のある方など、当院で是非ご相談ください。

 



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