親知らずの抜歯は上の歯と下の歯どっちが痛い?
[2026年04月07日]
はじめに 親知らず抜歯の痛みが不安な方へ
親知らずの抜歯と聞くと、「とにかく痛い」「仕事や学校にどのくらい影響が出るのか心配」と感じる方が多いと思います。なかでもよく聞かれるのが、「親知らずの抜歯は上の歯と下の歯どっちが痛いのか」という疑問です。
この記事では、親知らずの抜歯について、上の歯と下の歯で痛みの出方がどう違うのかを中心に、痛みを左右する要因や、抜歯後の経過、セルフケアのポイントを分かりやすくまとめます。
親知らず抜歯は上の歯と下の歯どっちが痛い?
親知らずの抜歯では、一般的に下の親知らずの方が痛みや腫れが出やすいといわれています。ただし、上か下かだけでなく、生え方や炎症の有無、全身の状態によっても痛みは大きく変わります。
この章では、上の親知らずと下の親知らずそれぞれの特徴と、痛みの違いについて解説します。
下の親知らず抜歯の痛みの特徴
下の親知らずは、あごの骨の奥深くに埋まっていたり、横向きや斜め向きに生えていたりすることが少なくありません。このような状態の親知らずを抜くときには、歯ぐきを切って開いたり、周りの骨を少し削ったり、歯をいくつかに分けて取り出したりする必要が出てくる場合があります。
さらに、下あごの骨は上あごに比べて「皮質骨」と呼ばれる硬い骨の割合が多く、弾力のある「海綿骨」が少ない構造です。そのため、歯を動かしにくく、抜歯操作による周囲の組織への負担が大きくなりやすいとされています。
このような理由から、下の親知らずの抜歯は処置時間が長くなりやすく、その分だけ術後の痛みや腫れが強く出たり、長引いたりする傾向があります。ただし、下の親知らずでも、まっすぐ生えていてしっかりつかめる状態であれば、比較的短時間で抜けて痛みが軽い方もいます。
上の親知らず抜歯の痛みの特徴
上の親知らずが生えている上あごの骨は、スポンジのような海綿骨が多く、下あごに比べると柔らかい構造です。そのため、歯を支える骨がややたわみやすく、親知らずが動きやすい分、抜歯がスムーズに終わることが多いとされています。
また、上の親知らずは、まっすぐ生えているケースも多く、歯冠(見えている部分)をしっかりつかめる状態であれば、抜歯時間も短くなりやすいです。その結果、同じ親知らずでも、上の歯は「抜くときも抜いたあとも比較的楽だった」と感じる患者さんが多い傾向があります。
ただし、上の親知らずでも、骨の中に深く埋まっている場合や、根が複雑な形をしている場合には、処置が難しくなり、痛みや腫れが出る可能性もあります。上の親知らずだから必ず軽いというわけではない点に注意が必要です。
上と下の親知らず抜歯の痛みの比較ポイント
上と下の親知らず抜歯の痛みを比べるときには、「どちらが痛いか」という二択ではなく、次のようなポイントで考えると分かりやすくなります。
- 骨の硬さと抜きやすさ
- 親知らずの生え方や埋まり方
- 抜歯の難易度
まず、骨の硬さと抜きやすさです。一般的には、骨が柔らかく抜きやすい上の親知らずの方が、処置後の痛みや腫れが少ない傾向があります。一方で、骨が硬く、埋伏や斜め生えが多い下の親知らずは、抜歯の負担が大きくなりやすい傾向があります。
次に、抜歯の難易度です。レントゲンやCTで確認したときに、骨の中にほとんど埋まっている親知らずや、根が曲がっている親知らずは、上でも下でも処置が難しくなります。そのような場合には、処置時間が長くなり、痛みや腫れが出やすくなる可能性があります。
このように、「一般的には下の親知らずの方が痛みが出やすいが、個々の状態によって大きく変わる」と考えていただくと良いと思います。自分の場合はどうかを知るためには、歯医者でレントゲンの画像を一緒に見ながら説明を受けることが大切です。
親知らず抜歯の痛みを左右する要因3選
親知らず抜歯の痛みは、上か下かだけで決まるわけではありません。同じ下の親知らずでも、ほとんど痛みが出なかった方もいれば、数日しっかり痛みが続いた方もいます。ここでは、痛みを左右する主な要因を見ていきます。
①親知らずの生え方と埋伏の状態
親知らずの生え方には、まっすぐ生えているもの、斜めに生えているもの、ほとんど見えずに骨や歯ぐきの中に埋まっているものなど、いくつかのパターンがあります。
まっすぐ生えていて、しっかりつかめる親知らずは、抜歯が比較的簡単になりやすく、処置時間も短くなることが多いです。一方で、水平に近い角度で倒れている親知らずや、ほとんどが骨の中に埋まっている「埋伏智歯」は、歯ぐきを切って開いたり、歯や周囲の骨を少しずつ削ったりしながら取り出す必要が出てきます。
抜歯が複雑になるほど、周囲の組織への負担が増えるため、術後の痛みや腫れが強くなったり、長引いたりする傾向があります。
②親知らず周囲の炎症やむし歯の有無
親知らずの周りの歯ぐきが腫れている「智歯周囲炎」や、親知らずや手前の歯にむし歯がある状態で抜歯を行うと、もともと炎症が起きている分だけ痛みや腫れが強くなりやすくなります。
炎症が強い場合には、すぐに抜かず、まず薬や消毒などで腫れを落ち着かせてから抜歯を行うこともあります。痛みや腫れが続いている状態で「早く抜いてしまいたい」と感じるかもしれませんが、歯医者と相談しながら時期を判断することが大切です。
③年齢や全身状態と治癒のスピード
一般的に、若い方ほど骨や歯ぐきの回復が早く、抜歯後の治りもスムーズになりやすいといわれています。一方で、年齢とともに骨が硬くなり、炎症が落ち着くまでに時間がかかる傾向があります。
また、喫煙習慣や糖尿病などの全身疾患、睡眠不足や強いストレスなども、傷の治りに影響すると考えられています。
生活習慣や持病について心配な点がある場合は、抜歯前に必ず歯医者に伝えておくと、より適切な配慮を受けやすくなります。
親知らず抜歯後の痛みと腫れの経過
親知らずを抜いたあとの痛みと腫れは、いつがピークで、どのくらい続くのかが気になるところだと思います。ここでは、一般的な経過の目安をお伝えします。
親知らず抜歯直後から三日目までの経過
抜歯中は、局所麻酔がしっかりきいているため、痛みはかなり抑えられます。麻酔が切れてくると、抜いた部分がズキズキするような痛みを感じ始める方が多いです。
多くの患者さんでは、抜歯後1〜3日くらいが痛みと腫れのピークといわれています。この時期は、処方された痛み止めを指示通りに飲みながら、できるだけ無理をせず過ごすことが大切です。
ただし、痛みの強さには個人差があります。ほとんど気にならない程度の方から、しっかり痛みを感じる方まで幅があるため、「こうでなければおかしい」と決めつけず、心配なときには歯医者に相談してください。
親知らず抜歯一週間以降の痛みと腫れの目安
一般的には、抜歯後数日を過ぎると、痛みや腫れは少しずつ落ち着いていきます。多くのケースで、1週間ほど経つと、日常生活の中で大きく気になる痛みは少なくなるとされています。
ただし、難しい抜歯で傷口が大きかった場合や、抜歯後の傷がうまくふさがらずに「ドライソケット」と呼ばれる状態になった場合には、1週間以上痛みが続くこともあります。
痛みがだんだん強くなってくる場合や、うずくような痛みが長く続く、といったときには、早めに歯医者に連絡してください。
上の親知らずと下の親知らずの治癒期間の違い
上の親知らずの抜歯は、傷が比較的小さく、骨の性質も柔らかいため、腫れや痛みが軽く、治りが早い傾向があります。まっすぐ生えている上の親知らずであれば、ほとんど腫れなかったという方も少なくありません。
一方で、埋伏した下の親知らずを抜いた場合には、2〜3日ほどしっかり腫れて、1週間前後かけてゆっくり落ち着いていくケースが多いとされています。処置が複雑だった場合には、痛みが引くまで1週間程度かかることも報告されています。
ただし、これらはあくまで一般的な目安です。ご自身の抜歯がどのくらいの難易度なのか、どのくらいの経過を予想しておくと良いかは、事前の説明で必ず担当の歯医者に確認するようにしましょう。
親知らず抜歯後の痛みを軽くするセルフケア
親知らず抜歯後の痛みや腫れを完全になくすことはできませんが、強くしないための工夫はあります。ここでは、一般的に推奨されるセルフケアのポイントをまとめます。
親知らず抜歯後の痛み止めと冷やし方のポイント
抜歯後は、歯医者から痛み止めや抗菌薬が処方されることが多いです。痛み止めは、指示された回数とタイミングを守って服用してください。痛みが出てから慌てて飲むよりも、ピークが予想される時間帯に合わせて飲んでおく方が、痛みを抑えやすくなる場合があります。
腫れが気になるときは、冷たいタオルや保冷剤をタオルで包んで、頬の外側からやさしく冷やします。長時間強く冷やし続けると、かえって血の巡りが悪くなり、治癒に影響する可能性もあるため、様子を見ながら行いましょう。
親知らず抜歯後の歯みがきと食事のポイント
抜歯当日は、うがいを強くしすぎると、傷口にできた血のかさぶた(血餅)が流れてしまうおそれがあります。口を軽くゆすぐ程度にして、指示があるまでは強いうがいを控えましょう。
歯みがきは、抜歯した部分を避けながら、他の歯はできるだけ普段どおり磨きます。毛先の柔らかい歯ブラシを使うと、周りの歯ぐきへの刺激を減らせます。市販の洗口液を使う場合は、刺激の強くないタイプを選び、用法・用量を守って使用してください。
食事は、麻酔がしっかり切れてから、柔らかいものを反対側でゆっくりかむようにします。熱い食べ物や固い食べ物、香辛料の強いものは、傷口を刺激しやすいため、しばらく控えた方が無難です。
親知らず抜歯後の生活習慣と歯医者受診の目安
抜歯後しばらくのあいだは、長時間の入浴や激しい運動、飲酒は控えた方が良いとされています。血流が急に良くなると、出血が再開したり、腫れが強くなったりするおそれがあるからです。
また、喫煙は傷の治りを遅らせる原因のひとつです。できる限り本数を減らすか、抜歯前後の期間だけでも控えることを検討してください。
強い痛みや腫れが続く、口の中から嫌なにおいや味を感じる、口が開きにくい、しびれが気になるといった場合には、「よくあること」と自己判断せず、早めに歯医者に相談しましょう。
まとめ 親知らず抜歯の痛みと上下の歯の違い
親知らずの抜歯は、どうしても「痛い」「怖い」というイメージが先に立ちやすい処置です。一般的には、骨が硬く埋伏しやすい下の親知らずの方が、抜歯の負担が大きく、痛みや腫れが出やすいといわれています。一方で、骨が柔らかく抜きやすい上の親知らずは、同じ条件であれば痛みが軽めで済むことが多いとされています。
ただし、実際の痛みは、「上か下か」だけで決まるわけではありません。親知らずの生え方、埋伏の程度、炎症やむし歯の有無、年齢や全身状態、抜歯の難易度など、さまざまな要素が関わっています。
抜歯後の痛みや腫れは、多くの方で数日〜1週間ほどで落ち着いていくとされていますが、心配な症状が続く場合には早めの受診が大切です。
「親知らず抜歯は上の歯と下の歯どっちが痛いのか」という疑問をきっかけに、自分の親知らずの位置や生え方を知り、歯医者でしっかり相談していただくことが何より重要です。不安な点があれば、そのままにせず、遠慮なく担当の歯医者に質問してください。








