顎関節症!主な症状と治療方法について解説します。

[2025年08月28日]

はじめに

あごの痛みや口の開けにくさを感じたことはありませんか?
これらの症状は「顎関節症」と呼ばれ、むし歯、歯周病に次ぐ第三の歯科疾患として、学校の歯科検診でも項目に挙げられています。

厚生労働省が平成28年に実施した歯科疾患実態調査によると、顎関節症は20代で患者が増加し始め、40代まで比較的高い有病率を維持することが分かっています。
また、女性は男性の約1.5倍から2倍の有病率を示します。

顎関節症は、がんのように加齢とともに増加する疾患ではなく、経過が良好な疾患であるのが特徴です。
しかし、激しい痛みや口が開かないといった症状が出ると、日常生活に大きな支障をきたし、QOL(生活の質)を著しく低下させる可能性があります。

本記事では、このような特徴を有する顎関節症について分かりやすく解説します。

目次

  • ◯顎関節症とは?
    •  ◆定義
  • ◯顎関節症の原因
    •  ◆日頃の生活習慣
    •  ◆行動
    •  ◆身体的な特徴
    •  ◆時間の経過
  • ◯顎関節症の症状
    •  ◆あごが痛い(筋痛)
    •  ◆あごを動かすと音がする(関節雑音)
    •  ◆口が開かない(開口障害)
  • ◯顎関節症の治療法
    •  ◆飲み薬
    •  ◆マッサージ(セルフケア)
    •  ◆マウスピース
  • ◯まとめ

顎関節症とは?

はじめに、顎関節症とはどんな障害で、どのような種類に分けられるのかを説明します。

定義

顎関節症とは、主に以下の症状が見られる障害の総称です。

  • ・あごの痛み
  • ・あごを動かした際の異音
  • ・口が開きにくい

これらの症状のいずれか一つでも当てはまる場合、顎関節症と診断されます。

顎関節症の原因

顎関節症の多くは、原因が特定できないのが現状です。

発症には、

  • ・日頃の生活習慣
  • ・行動
  • ・身体的な特徴
  • ・時間の経過

など、様々な要因が複合的に関与し、身体が許容できる範囲を超えた際に症状が現れると考えられています。
以下に具体例を挙げていきます。

日頃の生活習慣

緊張する仕事、多忙な生活、対人関係の問題などは、心理的な不安定さだけでなく、顎関節症の発症リスクになるといわれています。

行動

顎関節症は、以下のような習慣や状況が発症リスクとなり得ると考えられています。

  • ・食生活:硬いものを頻繁に食べる、長時間噛む
  • ・特定の活動:楽器演奏(バイオリン、サックスなど)、長時間のデスクワークや単純作業、重量物の運搬、編み物、絵画、料理、特定のスポーツ(接触スポーツなど)
  • ・口腔習癖:歯ぎしり
  • ・姿勢:日中や睡眠時の姿勢

身体的な特徴

顎関節症は、噛み合わせ、顎関節の形、咀嚼筋の状態、痛みの感じやすさ、性格、睡眠障害など、身体的な特徴によって発症しやすさが異なります。

時間の経過

上記のような生活習慣が長く続くと、顎関節症の発症リスクや、症状が悪化する度合いが高まります。

顎関節症の症状

顎関節症の主な症状は以下の3つです。

  • ・あごが痛い
  • ・あごを動かすと音がする
  • ・口が開かない

あごが痛い

あごやその周辺、時には耳の内部にも痛みを感じることがあります。
この痛みは、あごを動かした時だけでなく、安静時や押した時にも生じることがあります。
この症状の多くは、咀嚼に関わる筋肉の緊張や炎症、あるいは関節自体の炎症によって引き起こされる痛みです。

あごを動かすと音がする(関節雑音)

顎関節の関節円板が正常な位置からずれると、口を開け閉めした時に関節円板の動きがスムーズにいかず、カクッと音がなることがあります。

口が開かない(開口障害)

関節から異音がして状態が悪化すると、関節円板の引っ掛かりにより口が開かなくなる場合があります。
さらに症状が進行すると、音は消えるものの、口を大きく開けることが困難になります。

顎関節症の治療法

顎関節症の症状は、多くの場合、時間の経過とともに自然に改善・治癒します。
疫学的に見ても、顎関節症の兆候や症状は一時的で、治療をしなくても治癒することが多いです。
ただし、症状が持続していたり、再発を繰り返していたりする場合は、医療機関を受診することをお勧めします。

顎関節症の治療は現在、基本的に可逆的な方法が選択されます。
噛み合わせを削って調整したり、被せ物をやり直すなどの治療が行われるのは特別な場合に限られます。

主流となっている治療法は以下の3つです。

  • ・飲み薬
  • ・マッサージ(セルフケア)
  • ・マウスピース

これらの治療により、2週間から1ヶ月程度で症状の改善が期待されます。
次に、具体的な治療方法について詳しく解説します。

飲み薬

顎関節症の治療において、飲み薬として解熱鎮痛薬が処方されることが多いです。
これは、筋肉や顎関節に痛みがある場合に用いられます。

マッサージ(セルフケア)

顎関節症の治療では、クリニックで行われる治療に合わせて患者さん自身で行うセルフケアも重要です。
米国歯科研究学会でも、セルフケアの重要性が記述されています。
マッサージがメインですが、その他にも患部を温めたり運動療法を行うこともあります。

マウスピース

マウスピースを使用し、歯が均等に接触するようにすることで、咀嚼筋の緊張を和らげ、顎関節への過度な負担を軽減します。
原則として装着は夜間就寝時です。

まとめ

顎関節症は自然に治ることも多い病気なので、過度な心配はいりません。
ただし、日常生活に支障が出ている場合や痛みが3ヶ月以上続く場合は、医療機関を受診しましょう。
顎関節症の初期治療では、歯を削るなどの外科的処置は、ほとんどの場合行われません。

1ヶ月、長くても3ヶ月治療を続けても症状が改善しない場合は、専門機関の受診を検討する必要があります。

日頃から顎関節症を誘発するような習慣的な行動を改め、ストレスを軽減し、美味しく楽しく食事ができるよう努めましょう。

参考文献
・平成28年厚生労働省歯科疾患実態調査
・一般社団法人日本顎関節学会 顎関節症治療の指針2020
・顎関節症の診かた、治しかた(医学情報社)



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