乳歯の変色(黒・黄色・白斑)の原因と受診目安
[2025年11月07日]
はじめに
「子どもの歯の色がいつもと違う気がする」「もしかして虫歯…?」
お子さまの歯を見て、そのような不安を感じたことはありませんか?
乳歯は小さく、白く、きれいな印象があるため、色の変化に気づくと保護者の方はつい心配になってしまうものです。
実際に、乳歯の変色にはさまざまな原因があり、正しく見極めることが大切です。
本記事では、よく見られる乳歯の変色のタイプとその原因、歯科を受診すべきかどうかの判断の目安、ご家庭でできるケアや予防法までを、できるだけわかりやすくご紹介します。
目次
- ◯乳歯の変色の種類と主な原因
- ◆黒い歯
- ◆黄色い歯
- ◆白い斑点(ホワイトスポット)
- ◯受診の目安:どのような時に歯科へ相談すべきか
- ◆早めの受診が望ましいケース
- ◆経過観察で良いと考えられるケース
- ◯ご家庭でできるケア
- ◆仕上げ磨きとフッ素ケア
- ◆食生活の工夫
- ◯変色やむし歯を予防するために
- ◆定期検診の習慣化
- ◆乳歯を守ることは永久歯を守ることにつながる
- ◯まとめ
乳歯の変色の種類と主な原因
乳歯の変色にはいくつかのタイプがあり、それぞれに異なる原因があります。
以下では、特にご相談の多い「黒い歯」「黄色い歯」「白い斑点」の3種類についてご説明します。
黒い歯
もっとも注意が必要なのは、歯が黒く見える場合です。
- ▶︎虫歯の進行:
初期は白っぽい変化から始まり、徐々に茶色〜黒へと進行していきます。子どもは歯の痛みを感じにくいと言われており、痛みが出ていなくても虫歯である可能性があります。 - ▶︎歯の外傷(打撲など):
転倒やぶつけた際に歯の神経が傷つき、内部で出血が起きて黒く見えることがあります。外傷は前歯に多く見られます。 - ▶︎薬剤の影響:
稀ではありますが、妊娠中にテトラサイクリン系の薬剤を服用すると、胎児の乳歯に着色がみられることがあります。茶色〜黒の帯状の着色がみられ、クリーニングでは除去できません。 - ▶︎歯頚部にみられる黒色着色:
小児の2〜20%にみられるものです。ほとんどの歯の歯頚部(歯と歯茎の境目)に黒色の着色がみられます。
着色メカニズムは完全には解明されていませんが、口腔内細菌や唾液の性状が関与していると考えられています。黒色着色は細菌により産生された硫化鉄に由来すると言われています。
自分での歯磨きでは除去できませんが、歯科医院でのクリーニングで除去可能です。
黄色い歯
乳歯が黄色く見える場合もあります。
- ▶︎エナメル質形成不全:
エナメル質の形成が不完全なため、歯が薄くなり、内側の象牙質の黄色が透けて見えることがあります。先天的な要因が関係することもあります。 - ▶︎初期または急性のむし歯:
う蝕も初期や急速に進行するむし歯は黄色く見えることがあります。痛みは伴わないことが多いです。
着色部の歯の表面がざらざらしている場合は注意が必要です。
白い斑点(ホワイトスポット)
白い点やスジが見られる場合、以下の2つの可能性が考えられます。
- ▶︎ホワイトスポット(初期虫歯):
歯の表面のミネラルが溶け出す「脱灰」によって白く見える状態です。初期のむし歯であり、進行を防ぐには早期のケアが重要です。 - ▶︎フッ素症(斑状歯):
歯が作られる時期に過剰なフッ素を摂取した場合、歯に白い斑点やスジができることがあります。
乳歯はお母さんのお腹の中にいる時に形成されます。この時期は胎盤によって胎児が過剰なフッ素に晒されることはほとんどないため、乳歯にフッ素症が見られることは稀です。
受診の目安:どのような時に歯科へ相談すべきか
変色に気づいたとき、「すぐ歯医者に行った方がよいのか」「様子を見ても大丈夫か」と迷うこともあるでしょう。以下の基準を参考にしてみてください。
早めの受診が望ましいケース
- 歯が黒く、痛みや食事中の違和感を訴えている場合
- 転倒や打撲のあとに変色が見られた場合
- 自覚症状はないが、歯が黒く穴が空いている場合
これらは放置すると悪化する可能性があるため、早めに歯科医院での診察を受けましょう。
経過観察で良いと考えられるケース
- 白い斑点があるが、痛みや進行がない場合
- 歯が黄色っぽいものの、全体的に均一で痛みもない場合
ただし、いずれの場合も、定期検診などで経過を確認してもらうことが推奨されます。
ご家庭でできるケア
乳歯の健康を守るためには、日々のケアがとても重要です。以下のポイントを意識してみてください。
仕上げ磨きとフッ素ケア
- 仕上げ磨きは、小学校低学年ごろまでは保護者の方が行ってください。とくに奥歯や歯と歯の間は丁寧に磨く必要があります。
- フッ素入り歯みがき粉を、年齢に合った濃度で使用し、必要に応じて歯科医院でのフッ素塗布も検討しましょう。
食生活の工夫
- おやつの時間を決めることで、虫歯になりにくい環境を整えることができます。
- 砂糖の多い飲料や間食を控えることも、歯の健康には効果的です。特に就寝前の摂取には注意しましょう。
変色やむし歯を予防するために
乳歯の異常を未然に防ぐには、定期的な歯科医院でのチェックと、早期対応が欠かせません。
定期検診の習慣化
「痛くなってから受診する」のではなく、「何もなくても半年に1回」通院することで、変色や虫歯の早期発見・早期対処が可能になります。
保護者の安心にもつながります。
乳歯を守ることは永久歯を守ることにつながる
乳歯はやがて生え変わりますが、その役割は非常に重要です。
早期に虫歯や抜歯が起きると、永久歯の生え方や歯並びに影響を及ぼす可能性があります。
乳歯期からのケアが、将来の歯の健康にも直結します。
まとめ
お子さまの歯の変化に気づくことができた時点で、保護者の方の意識は非常に高いといえます。
不安な場合は一人で悩まず、早めに歯科医院で相談してみてください。
そして、ご家庭でのケアや定期的な検診を継続することが、お子さまの笑顔と歯の健康を守るいちばんの近道になります。
小さな気づきと日々の積み重ねが、お子さまの未来の歯を大切に育んでくれるはずです。








