人の歯はなぜ2回しか生えない?乳歯・永久歯の仕組みと動物との違いを解説
[2026年09月28日]
◯はじめに
「子どもの歯は乳歯から永久歯に生え変わるのに、大人になると、なぜ新しい歯は生えてこないのだろう?」
そんな疑問を持ったことはありませんか。永久歯を失っても、通常は自然に新しい歯が生えてくることはありません。
一方で、「サメは何度も歯が生え変わると聞くけれど、人間とは何が違うの?」「ゾウやワニの歯はどうなの?」と気になる方もいるでしょう。
今回は、人の歯が乳歯と永久歯の2世代である仕組みについて、ほかの動物との違いや、近年進められている歯の再生研究も交えながら解説します。
◯目次
- ◯そもそも人の歯は何回生えるのか
- ◆乳歯から永久歯への「二生歯性」
- ◆なぜ乳歯と永久歯の2世代なのか
- ◆永久歯のあとに歯が生え変わらない仕組み
- ◯動物界に見る「歯の生え変わり」の多様性
- ◆サメは何度も歯が生え変わる
- ◆ワニやゾウにも独自の生え変わり方がある
- ◆げっ歯類は伸び続ける前歯を持つ
- ◯永久歯を失ったらどうなる?現代歯科と再生医療の今
- ◆失った永久歯は自然には戻らない
- ◆新しい歯を生やす再生研究も進んでいる
- ◆今の永久歯を守るためにできること
- ◯まとめ
◯そもそも人の歯は何回生えるのか
◆乳歯から永久歯への「二生歯性」
人間を含む多くの哺乳類は、乳歯と永久歯という2世代の歯を持つ「二生歯性(diphyodont)」と呼ばれる特徴があります。
人間では、乳歯は全部で20本あり、生後6か月ごろから少しずつ生え始めます。その後、6歳前後になると永久歯が生え始め、乳歯も順番に永久歯へと生え変わっていきます。一般的には12歳ごろまでに、第2大臼歯まで含め、親知らずを除く28本の永久歯が生えそろっていきます。ただし、生える時期には個人差があります。
つまり、人間には乳歯と永久歯という2世代の歯があり、乳歯から永久歯への生え変わりは基本的に一度だけです。
◆なぜ乳歯と永久歯の2世代なのか
乳歯と永久歯という2世代の歯を持つことには、顎や顔の成長が関係しています。乳歯から永久歯への生え変わりには、顎や顔の成長が関係しています。成長に伴って顎の大きさや口腔内の環境が変化し、乳歯から永久歯へと移行していきます。日本歯科医師会でも、乳歯から永久歯への生え変わりについて、顔や顎、全身の成長との関係が説明されています。
ただし、人の歯が2世代に限られている理由を、顎の成長だけで説明することはできません。人を含む多くの哺乳類では、進化の過程で乳歯と永久歯という2世代の歯を持つ仕組みが形成されており、歯が作られる発生の仕組みも関係しています。
◆永久歯のあとに歯が生え変わらない仕組み
歯は、「歯胚(しはい)」と呼ばれる歯のもとになる組織から作られます。乳歯の歯胚は胎児期の早い段階から形成され、永久歯の歯胚も歯の種類に応じて作られていきます。
歯胚の形成には「歯堤(したい)」と呼ばれる組織が関わっています。人では、永久歯が形成されたあと、通常はさらに次の世代の歯が次々と形成される仕組みは維持されません。これには、歯の発生に関わる歯堤などの組織の働きが関係していると考えられています。
一方、何度も歯が生え変わる動物では、新しい歯を作るための組織が維持されています。こうした歯の発生の仕組みの違いが、人間では永久歯のあとに新しい歯が次々と作られないことに関係していると考えられています。
◯動物界に見る「歯の生え変わり」の多様性
◆サメは何度も歯が生え変わる
サメは、歯が何度も生え変わる「多生歯性(polyphyodont)」の代表的な動物です。顎の内側には次に生える歯が複数準備されており、使われている歯が抜けると、新しい歯が順次その位置を補います。生涯にわたって何度も歯を交換できる点は、人間との大きな違いです。
なかでもジンベエザメの口には非常に多くの小さな歯が並んでいますが、主にプランクトンなどを海水からこし取って食べるため、これらの歯で獲物を噛み砕いているわけではありません。口の中には3,000本以上の小さな歯が300列以上並んでいますが、これらの歯で獲物を噛んで食べるわけではありません。
◆ワニやゾウにも独自の生え変わり方がある
サメ以外にも、歯を繰り返し交換する動物がいます。ワニも新しい歯を作り続ける仕組みを持ち、古い歯に代わって次の歯が生えてきます。
一方、ゾウの奥歯には人間とは異なる特徴があります。ゾウでは、顎の左右それぞれに生涯で6本ほどの臼歯が順番に現れ、すり減った歯と入れ替わりながら使われます。いわば、ベルトコンベアのように奥から前へ歯が移動する仕組みです。
このように、ゾウの臼歯は人間のように上下方向へ生え変わるのではなく、後方から前方へ移動しながら順番に使われます。
◆げっ歯類は伸び続ける前歯を持つ
ネズミやリスなどのげっ歯類は、サメやワニとは異なる仕組みを持っています。げっ歯類の前歯(切歯)は、生涯にわたって伸び続けるのが特徴です。前歯は食べ物などをかじることで少しずつすり減り、伸びる量と削れる量のバランスが保たれています。
しかし、噛み合わせの異常などによって十分にすり減らなくなると、前歯が伸びすぎて食事がしにくくなることがあります。
このように、動物には歯を何度も交換するものや、成長し続ける歯を持つものなど、それぞれ異なる仕組みがみられます。
◯永久歯を失ったらどうなる?現代歯科と再生医療の今
◆失った永久歯は自然には戻らない
人間の永久歯は、むし歯や歯周病、外傷などで失っても、通常は自然に新しい歯が生えてくることはありません。
歯を失ったままにしていると、隣の歯が空いたスペースへ傾いたり、噛み合っていた反対側の歯が少しずつ伸び出したりすることがあります。その結果、噛み合わせに影響する場合もあります。
失った歯を補う方法としては、入れ歯やブリッジ、インプラントなどがあります。どの治療方法が適しているかは、失った歯の位置や本数、残っている歯や顎の骨の状態などによって異なります。
◆新しい歯を生やす再生研究も進んでいる
近年、新しい歯を生やすことを目指した研究も進められています。
2021年には、歯の形成を抑える働きを持つ「USAG-1」というタンパク質を中和抗体で抑えることで、先天的に歯が欠けるモデルマウスの歯の形成を回復させた研究成果が、学術誌『Science Advances』に発表されました。また、動物実験では、抗USAG-1抗体によって新たな歯の形成が促される可能性も報告されています。
その後、人での臨床開発も進められています。その後、人での臨床開発も進められています。開発企業からは、先天性無歯症を対象とした抗USAG-1抗体『TRG035』について、臨床試験に向けた開発が進められていることが公表されています。
ただし、現時点では、先天性無歯症などを対象とした臨床開発が進められている段階です。
◆今の永久歯を守るためにできること
歯の再生研究が進められている現在も、今ある永久歯をできるだけ健康に保つことが大切です。
毎日の歯みがきでは、フッ化物配合歯みがき剤を使用することで、歯の再石灰化を促し、むし歯予防につながります。必要に応じて、歯科医院でフッ化物塗布を受ける方法もあります。
また、生えたばかりの永久歯など、奥歯の溝にむし歯ができるリスクが高い場合には、溝を材料で封鎖するシーラントが検討されることもあります。
定期的に歯科医院でチェックを受けることも大切です。受診の間隔は、お口の状態やむし歯・歯周病のリスクなどによって異なるため、歯科医師や歯科衛生士と相談して決めましょう。毎日のセルフケアと定期的なチェックを続けることが、永久歯を長く保つことにつながります。
◯まとめ
人間は、乳歯と永久歯という2世代の歯を持つ「二生歯性」の特徴があります。乳歯から永久歯への生え変わりには顎や顔の成長などが関係していますが、人間では永久歯のあとに次の世代の歯が次々と作られる仕組みは通常ありません。
一方、動物の歯にはさまざまな特徴があります。サメやワニのように何度も歯を交換する動物や、複数世代の奥歯を順番に使うゾウ、生涯にわたって成長し続ける前歯を持つげっ歯類など、人間とは異なる仕組みがみられます。
人間の永久歯は、失っても通常は自然に新しい歯が生えてくることはありません。新しい歯を生やす再生研究は人での臨床開発へ進んでいますが、現時点では一般的に受けられる治療ではありません。今ある永久歯を長く保つためにも、毎日のセルフケアと定期的な歯医者でのチェックを続けることが大切です。


