ADHDと歯ぎしりや睡眠時無呼吸症候群との関連性について
[2025年11月02日]
はじめに
近年、歯ぎしりや食いしばりなどのお口の癖と発達障害のひとつであるADHDとの関連性を指摘する研究が進んでいます。
今回は、お口の癖とADHDの関連性についてご紹介します。
この記事を最後までお読みいただけると、お口の癖とADHDが関連する理由や対処法などがお分かりいただけると思います。
目次
- ◯ADHDについて
- ◆ADHDとは
- ◆ADHDの特徴
- ◯お口の癖とADHD
- ◆発生頻度について
- ◯ADHDとの関連性が高い理由
- ◆歯ぎしりや食いしばりと関連する理由
- ◆睡眠時無呼吸症候群と関連する理由
- ◯お口の癖への対処法
- ◆歯ぎしりや食いしばり
- ◆睡眠時無呼吸症候群
- ◯まとめ
ADHDについて
ADHDは、Attention Deficit Hyperactivity Disorderの頭文字をとって作られた言葉で、日本語では注意欠如・多動症と訳されています。
ADHDとは
ADHDは、年齢や発達段階と比べて、注意力が足りなかったり、落ち着きがなかったりする特性を持つ状態です。
ADHDは7歳ごろまでに現れ、大人になってもADHDの傾向は続くようです。
ADHDの特徴
ADHDにはいくつかの特徴があります。
▶︎不注意
注意力不足で仕事や作業でミスしやすかったり、忘れ物やなくしものをしやすかったりします。
▶︎多動性
落ち着きがなく、じっとしているのが苦手で、じっとしているように見えても体のどこかを動かしていることがあります。
必要以上に話したり、自分の話を一方的に伝えたりする方もいます。
▶︎衝動性
思ったことをすぐに口に出してしまったり、感情の起伏が激しくなったりします。
欲しいものをすぐに買うなど、計画性に乏しい方も見られます。
お口の癖とADHD
今回のテーマであるお口の癖とADHDについてお話しします。
ADHDは、歯ぎしりや食いしばりなどの噛み合わせの癖に加え、癖ではありませんが、睡眠時無呼吸症候群との関連性なども指摘されています。
発生頻度について
ADHDの方に歯ぎしりや食いしばりが多いかどうかについて、さまざまな施設で研究が進められています。
その一例をご紹介します。
▶︎イタリアでの研究
イタリアのローマのGemelli IRCCS大学病院でADHDの子供40人を対象に歯ぎしりや食いしばりの有病率を調べた研究があります。
この研究によりますと、ADHDの子供の40%に歯ぎしりや食いしばりがみられました。
ADHDでない子供の歯ぎしりや食いしばりは7.5%ということでした。
また、ADHDの子供の62.5%に睡眠時無呼吸症候群が見られました。
一方、ADHDでない子供では10%でした。
ADHDのお子さんの方が歯ぎしりや食いしばり、睡眠時無呼吸症候群の発生頻度が高いと結論づけられています。
なお、歯列不正についても調べたようですが、こちらはADHDとそうでない子供の間に差は認められなかったようです。
▶︎系統的に調べた研究
こちらは、ADHDの子供2629人、青年1739人を対象に調べた研究を始め、ADHDと歯ぎしりや食いしばりに関する32の論文を系統的に調べた研究で、Sleep Medicine誌に掲載されました。
ADHDの子供や青年の31%に歯ぎしりや食いしばりがみられ、著者はADHDが歯ぎしりの増加に関連していると考えています。
▶︎遺伝子を調べた研究
ADHDの方は睡眠時無呼吸症候群を合併していることが多く、その頻度は25〜50%とも言われています。
その両者の間に、遺伝的関連性がないかどうかを調べた研究があります。
こちらは、中国の空軍医科大学での研究で、これによりますとADHDと睡眠時無呼吸症候群には遺伝的に強い関連性があることが示唆されました。
ADHDとの関連性が高い理由
現在考えられているお口の癖とADHDが関係する理由を紹介します。
歯ぎしりや食いしばりと関連する理由
ADHDの方が、どうして歯ぎしりや食いしばりの頻度が高くなるのかについては、次のように考えられています。
▶︎多動性
前述したように、ADHDの方の特徴のひとつに多動性があります。
多動性の特性は、体の動きとして現れることがあり、歯ぎしりや食いしばりなどがそれに当てはまる方もいると考えられています。
▶︎ストレス
ADHDの方の中には、周囲から認めてもらえないなど、生きづらさを感じる方がいます。
そのような方は、日常生活でストレスを感じやすく、ストレスにより歯ぎしりや食いしばりを起こすことがあります。
睡眠時無呼吸症候群と関連する理由
起きるか、眠るか、それは覚醒中枢(目覚めの神経系)と睡眠中枢(眠りの神経系)のバランスで決まります。
覚醒系が強ければ目が覚め、睡眠系が強くなれば眠たくなります。
このバランスは、脳の中で神経に働きかける神経伝達物質というもので制御されています。
ADHDの方では、GABAという神経伝達物質のひとつが少なくなっていることがあり、これにより睡眠障害が出るという説が有力です。
睡眠時無呼吸症候群は睡眠障害のひとつであり、このほかさまざまな睡眠障害がADHDと関連していると考えられています。
お口の癖への対処法
お口の癖への対処法として一般的なのはマウスピースです。
歯ぎしりや食いしばり
マウスピースをつければ、歯が触れ合わなくなるので歯のすり減りを防ぐことができます。
また、顎の関節や筋肉にかかる負担も軽くなり、痛みや違和感の改善が期待できます。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群では、マウスピースをつけることで下顎を前に少しずらし、気道が狭くならないようにします。
軽症〜中等症の睡眠時無呼吸症候群なら、マウスピースで改善できる可能性があります。
まとめ
今回は、お口の癖とADHDの関連性についてお話ししました。
歯ぎしりや食いしばり、睡眠時無呼吸症候群は、ADHDと深い関連性があると考えられています。
当院は、ADHD自体の診療は行っていませんが、ADHDに関連するお口の癖については、長年にわたり診療を続けている歯科医院です。
ADHDの方はもちろんですが、そうでない方もお口の癖についてお悩みの方、相談のある方は、当院にぜひお越しください。








