小児矯正で行われている咬合誘導ってどんな処置?

[2023年01月14日]

こんにちは

現代の矯正治療は、子どもを対象とした小児矯正と、大人を対象とした成人矯正に分けられています。

成人矯正とは聞き慣れない言葉だと思いますので、ここでは大人の矯正治療とします。

成長発育段階に取り組む小児矯正は、成長発育の力を利用し、歯の位置や噛み合わせだけでなく、骨格の形や大きさ、位置を整えます。

正しく顎や歯などお口そのものを育てていくような治療ですね。

これを咬合誘導といいます。

咬合誘導はどのような処置で、矯正治療とどのような点に違いがあるのでしょうか。

そこで今回は、咬合誘導についてご説明します。

 

咬合誘導について

咬合誘導とは一体どのような処置なのでしょうか。

 

咬合誘導とは

咬合誘導とは、成長発育中の子どもに対して、成長発育を利用しながら、正しい噛み合わせを乱してしまうような要素が発生しないよう予防し、健全な永久歯の歯並びに誘導することです。

難しく思われるかもしれませんが、要するに成長発育を上手に利用しながら、歯がきれいに生え変わるように、噛み合わせを育てていく処置です。

 

単なる噛み合わせ治療だけではない咬合誘導

咬合誘導は捉え方によって、狭い意味での咬合誘導と広い意味での咬合誘導に分けられます。

狭い意味での咬合誘導では、単に正しい噛み合わせを得ることだけを意味しています。

一方、広い意味での咬合誘導では、虫歯の予防や早期発見・早期治療も含められています。

虫歯だらけの歯並びで正しい噛み合わせもあったものではありませんから、後者の広い意味での咬合誘導の方が最適であると考えられています。

 

咬合誘導に最適な年齢

咬合誘導は、子どもの成長発育を利用して噛み合わせを整える処置です。

お口の中は、およそ18~20歳ごろまで成長/発育が続きますが、場所によって差があり、早いところでは10~12歳ごろには成長が終了します。

咬合誘導はいつからでもできますが、乳歯から永久歯へと歯並びが変わっていく混合歯列期である5~12歳ごろが適しています。

咬合誘導には、小学校の間に取りかかるのが効果的です。

 

咬合誘導のメリット

子どもの頃から咬合誘導に取り組むと、次に挙げるようなメリットが得られます。

 

顎の骨格を整えられる

顎の骨がどのように成長していくのか、そのプロセスは明らかになっています。

咬合誘導をすることで、顎の骨格の形や大きさ、上下の位置関係などを最適にすることができます。

成長発育が終わってからでは、骨切り手術をする他方法がないので、咬合誘導の大きな利点です。

 

歯を並べやすくする

顎の骨格を最適な状態に整えますので、永久歯をきれいに並べやすくなります。

ただし、歯の大きさを変えることはできないので、必ずしも抜歯しなくても良いというわけではありません。

 

永久歯の矯正治療がスムーズになる

もし、永久歯になったときに歯並びや噛み合わせに問題が生じ、矯正治療が必要となった場合でも、咬合誘導を受けていれば、スムーズに治療が進められ、治療期間も短くなります。

 

歯周組織の健全化

咬合誘導で歯並びを整えると、歯を支える骨などの歯周組織の形も同時に理想的なものになります。

無理なく歯を支えられるというわけです。

このため、歯の寿命にも良い影響が出ると考えられています。

 

咬合誘導の方法

咬合誘導の方法には、矯正装置を使う方法と筋機能療法を使う方法の2つがあり、それらを上手に組み合わせて行われます。

このほか、歯科予防処置なども並行して進められます。

 

矯正装置を使った咬合誘導

咬合誘導治療で使われる矯正装置は、歯に接着する固定式、ご自身で取り外しできる可撤式、お口の外につける顎外矯正装置などさまざまなタイプがあります。

どのタイプが適しているのかは、歯並びや噛み合わせの状態、年齢によって違います。

例えば顎外矯正装置など、かなり大掛かりな矯正装置に思われるかもしれませんが、いずれの矯正装置も、1週間前後で慣れてしまいますから、ご安心ください。

 

筋機能療法を使った咬合誘導

筋機能療法は、お口の周囲の筋肉のトレーニング療法です。

舌を前に出す、指や爪を噛むなど、歯並びを悪くする癖の解消を目的として行われます。

永久歯の歯並びや噛み合わせが整えられても、こうした癖が残ったままですと、再び悪くなってしまいますので、癖の解消を目的とした筋機能療法はとても大切です。

 

その他の処置

虫歯だらけでは、理想的な永久歯の歯並びは得られません。

そこで咬合誘導は、歯並びだけでなく、歯やお口の健康状態も同時に保つようにします。

フッ素やブラッシングの練習を通した虫歯の予防に加え、虫歯の早期発見、早期治療も行います。

 

咬合誘導と大人の矯正治療の比較

咬合誘導も大人の矯正治療も、ゴール=最終的な治療目標は、正しい歯並びと噛み合わせという点は同じです。

しかし、両者には大きな違いがあります。

それは、そこに至る過程です。

 

咬合誘導

子どもの矯正治療である咬合誘導では、歯列不正の治療だけでなく、将来的な歯列不正の予防も含まれています。

また、虫歯の予防だけでなく、虫歯になった場合には虫歯治療も行われるように、他の歯のトラブルに対しての治療や予防も同時に進めていきます。

この点から、咬合誘導は、単なる矯正治療の枠を超え、小児歯科という子どもの歯科疾患を包括的に対象とした歯科医療のひとつとしての位置付けがなされています。

 

大人の矯正治療

大人の矯正治療は、すでに歯並びが悪くなっているところからスタートします。

もちろん、子どもの矯正治療のように、乳歯があるわけでもなく、永久歯のみを対象とした治療です。

生え終わった永久歯の歯を移動させて、歯並びを整えるのが大人の矯正治療です。

また、大人の矯正治療では、虫歯や歯周病がないことが大前提です。

もし虫歯や歯周病になれば、矯正治療を一旦中止して、そちらの治療を優先することもあります。

子どもの矯正治療では、他の歯の治療も並行して行うので、これも大きな違いと言えます。

 

まとめ

今回は、小児矯正で行われている咬合誘導についてお話ししました。

咬合誘導は、子どもの将来の永久歯の歯並びや噛み合わせが理想的な状態になるよう、子どもの歯並びや噛み合わせを育てていく処置です。

大人の矯正治療とゴールは同じですが、歯並びや噛み合わせを育てていくだけでなく、虫歯予防など歯の健康管理も含めている点に咬合誘導の特徴があります。

それだけに、咬合誘導には、矯正治療の知識だけでなく、子どもの虫歯などの知識も必要です。

当院は、矯正治療や咬合誘導を含めた小児歯科治療の専門知識、そして経験の豊富な歯科医院です。

もし、お子さんの歯並びや噛み合わせに気になる点のある方は、当院で一緒に咬合誘導に取り組みませんか?

 



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