歯はどうやって生まれてくるの?

[2022年11月28日]

魚や動物、もちろん人間にも口の中には「歯」があります。

「歯」があることは当然と考えてしまいがちですが、果たしてどこから

生まれてくるのか、考えたことがありますか?

人間の体は小宇宙とよく言われますが、「歯」の世界もなかなか興味深いものですよ。

今回はそんな「歯」の発生について解説します。

 

目次

1.歯の発生と成長

2.永久歯の生え変わりがない理由

3.まとめ

 

歯の発生

最初に、歯が生まれてくることを専門用語では「発生」と呼びます。

口の中に歯が生えてくることを「萌出(ほうしゅつ)」と呼びます。

ここでは「発生」について解説します。

 

「歯」は植物と同じように、芽が出て発芽をするように成長します。

芽が出るのはいつ頃だと思いますか?

赤ちゃんが誕生してから1週間?

それとも10日?

いえいえ、「歯」はそんなにゆっくりしていられません。

なんと胎生6-7週で「歯」の元になる芽が出てきます。

胎生6週は、赤ちゃんが魚のような形から段々と人間の形に変化する真っ只中です。

脳や脊髄など重要な神経系や心臓などがムクムクと成長するなか、小さな小さな歯の芽も育ってゆきます。

この時期を歯の発生の歴史の中では「開始期」と呼びます。

お母さんのお腹の中、赤ちゃんの口の中で、開始期→増殖期→組織・形態分化期→石灰化期→萌出期と歴史を刻んだ歯は、生後半年ごろに乳歯として口の中に飛び出してくるのです。

 

ではもう少し細かく「歯」の成長を見ていきましょう。

 

開始期(約胎生6ー7週)

このころ、赤ちゃんの口の中に歯堤(してい)と呼ばれる粘膜のふくらみのようなものができます。

歯堤はちょうど植物の種が発芽するように、赤ちゃんの成長に伴って蕾(つぼみ)状にふくらんでおおきくなり、歯胚(しはい)とよばれる部分が出来上がります。

これが「歯」の基(もと)となります。

この歯胚の形によって蕾状期(らいじょうき)や帽状期(ぼうじょうき)、鐘状期(しゅうじょうき)といった分類をすることもありますが、むずかしいので今回は割愛しますね。

 

増殖期(約胎生8週)

さあ、このくらいになると段々と赤ちゃんも人間の形に近くなっていきます。

にょきにょきと手足が生え、心臓の拍動もしっかりと聞き取れるようになります。

一方歯胚も段々と「歯」の形に近づいていきます。

将来エナメル質になるエナメル器、歯の神経や血管・象牙質と呼ばれる柔らかい部分になる歯乳頭(しにゅうとう)、歯肉やセメント質と呼ばれる歯根の一部・歯根膜と呼ばれる歯の根を覆う膜となる歯小嚢(ししょうのう)に分化していきます。

「歯」は頭の方から徐々に発生します。

そのため、まだこの時点では歯の根(歯根:しこん)はありません。

 

組織・形態分化期(約胎生14ー18週)

この頃にはお母さんのつわりもひと段落してくる頃かもしれません。

少しずつ赤ちゃんが動くようになり、まるでお腹の中を歩くような動作をみせる頃です。

これは実際には歩いているのではなく、神経がちゃんと機能するかどうか、反射をつかった確認作業のようなものだそうです。

話が逸れましたが、「歯」はどうなっているでしょうか。

 

「歯」は、というと増殖期で出現したエナメル器が更に細かく分化し、外エナメル上皮、エナメル髄(ずい)、中間層、内エナメル上皮に分かれていきます。

歯なのに上皮??なんだそりゃ。

そんな声が聞こえてくるようですが、専門用語なのでご了承ください…

さて、ここで分化したそれぞれが、「歯」をつくるためにとっても大事な働きをするのです。

細かな話はむずかしくなるため控えますが、それぞれがシグナルをだして、

「あなたはエナメル質になぁれ!」

「あなたは象牙質になってちょうだい!」

と、シンデレラの魔法使いもびっくりな変身をするのです。

さらに、びっくりなことに乳歯も出来上がらないこの時期に、すでに永久歯のもとになる歯胚が誕生しているのです!

まだ赤ちゃんが生まれてもいない時期から、「歯」は大人になる準備をしているのですね。

 

石灰化期(約胎生7ヶ月ごろ)

だいぶお母さんのお腹も大きくなるころです。

男の子か、女の子か、もう出産の準備を始める頃でしょうか。

「歯」も佳境にはいるころです。

昆虫の幼虫のように、「歯」も出来始めはふにゃふにゃの柔らかい状態です。

最初に説明したように、歯根(しこん)もまだありません。

しかし、もうすぐ赤ちゃんが外にでてくるという時期になると、「歯」もしっかり食事をとれるように硬くなるとともに、根をはる準備をします。

それがこの時期です。

全体が石灰化し硬くなると共に、根っこが下へ下へと伸びていきます。

また、同時進行で永久歯もこれまでと同様に着々と形を変えていきます。

 

萌出期(生後6ヶ月ごろ)

長い長い妊婦期間を終えて、赤ちゃんは無事に外に出てきました。

段々と出来ることが増えてきて、表情も豊かになってきました。

いつから離乳食にしよう…と考えていると、あ!歯が生えてる!!

生後6ヶ月ごろになると、下の前歯が一番最初に生えてきます。

歯根が下へ伸びていくと同時に、歯は上へ上へと頭を伸ばし、赤ちゃんの出生に少し遅れて「歯」が顔を出します。これを萌出(ほうしゅつ)と呼びます。

この間にも次に生えてくる永久歯、乳歯同様せっせと準備を進めているのです。

 

お母さんのお腹の中に生を受けてから、赤ちゃんと共に長い時間をかけて口の中に生えてくる「歯」

 

なんだか愛おしくなりませんか?

大事にしてあげたくなりませんか?

 

永久歯はなぜ一度しか生えないのか?

「歯」がどうやって生まれてくるのかはわかりましたね。

でも、何回も歯が生えてきてくれたらいいのに…って思ったことはありませんか?

サメってずるい…なんて。

組織的な話をすると、歯の基となる歯胚は乳歯の時に1回、永久歯のときに1回、計2回しか出現しないのです。

また、シンデレラの魔法使いの役割をする外エナメル上皮やなんやらは、自身の役目を終えるともう二度と出てくることはないのです。

人間の歯は「二生歯」と呼ばれ、生涯で2回しか歯が生えてこないという生物なのです。

理由は明らかになっていませんが、人間の体格的な成長は20歳前後でピークに達し、人類が出現したその昔には平均寿命が現代よりもうんと短かったために、遺伝子が歯の生え変わりは1度で十分!と判断したためではないか?と言う人もいます。

そうなると、歯は30歳を超えると衰える一方なのかもしれません。

おのずと定期的なメンテナンスが大切、という結論に至りますね。

 

また、歯の再生医療ですが、現段階で完全に歯を作り出すことは不可能です。

歯の一部を作り出すことには成功しているものの、研究室の中での結果なので、実用化されるにはまだまだ時間がかかりそうです。

まとめ

今回のお話しはとても複雑な過程を、可能な限りわかりやすく解説しています。

普段気にかけていない「歯」のこと、少しでも愛おしく感じてくれたら嬉しいです。

そんな「歯」、定期的なメンテナンスで是非大事にしてあげてくださいね。

 



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