歯科でよく行うレントゲン写真撮影 お子さんへの影響は?

[2023年03月22日]

診断をする上で重要なレントゲン写真撮影

レントゲン写真は今日の歯科医療において欠く事の出来ない重要な資料です。虫歯の有無、歯周病の程度、歯の根の先の炎症、顎の関節の状態など様々なものを見ることが可能となります。これだけで診断が確定するわけではありませんが、診断をする上で重要なものです。レントゲン写真撮影における欠点とすると被曝をすることが挙げられます。患者さんの中にはこの被曝を過度に恐れて、撮影を拒否されることがあります。特に2011年の3.11が起きて間もない頃はそのような方が散見されました。撮影するしないは患者さんの選択になります。しかし、診査・診断において被曝するデメリットよりも撮影をする有効性が高い場合には撮影を行う方が良いでしょう。歯科におけるレントゲン写真撮影についての基本を確認していきます。

 

【目次】

・歯科でよく行うレントゲン写真撮影 基本事項

・歯科でよく行うレントゲン写真撮影 確定的影響と確率的影響

・歯科でよく行うレントゲン写真撮影 子供に対しての安全性

・まとめ

 

歯科でよく行うレントゲン写真撮影 基本事項

まず最初に知っておくべきことは歯科で用いるレントゲン写真撮影は放射線被曝が非常に少ないということです。患者さんの中でよく不安がるのはたくさん写真を撮るとがんになるというものです。これは本当でしょうか。

基本事項を確認しましょう。

放射線や放射能、放射性物質などの違いを確認します。放射能は放射線を出す能力を指します。放射性物質は放射能を持つ物質を指します。放射性物質から放射線が出るわけです。放射性物質はそのものが放射能を持つので体に入るとそれが体内に残ったり、移動したりします。しかし、放射線は体に残りません。歯科で使うレントゲン写真撮影装置は放射線発生装置であり、放射能はないのです。撮影を行なっても放射性物質が体内に残るわけではありません。放射線が蓄積されていく様な誤解を持っている方もいるのでその点は安心してください。

次に人が受ける放射線、被曝線量の単位はSv(シーベルト)で表されます。普段何気なく過ごしていても実は被曝をしていて、自然放射線というものがあります。これは年間で約2.4ミリSvと言われています。医科で用いる胸部エックス線写真撮影の場合はおよそ0.06ミリSvです。一方、歯科で用いるレントゲン写真撮影によるものは0.01から0.03ミリSv程度と言われています。国際線で日本からニューヨークの往復をした際には約0.2ミリSvの被曝をすると推定されています。医療の診断においての放射線被曝はこういったものと比べても安全であると言えるでしょう。

 

歯科でよく行うレントゲン写真撮影 確定的影響と確率的影響

レントゲン写真撮影をするとがんになるという話はどこからきたのか考えたいと思います。被曝の影響には種類があります。確定的影響と確率的影響です。

確定的影響にはしきい値が存在します。これは一定の放射線量を浴びると影響が出る、それ以下では出ないという基準が存在します。確定的影響で懸念されるものには組織や臓器の機能損傷や形態異常があります。これらは被曝線量の数値から歯科で行うレントゲン写真撮影では起こる可能性はないです。

確率的影響は細胞の突然変異により発生する影響です。放射線により細胞のDNAに障害がおきてがんが発生するという話があります。しかし、国立がんセンターにおける発表では100ミリSv未満の放射線被曝では発がんリスクを検出するのが困難とされています。つまり、日常における放射線被曝と歯科で用いる一般的なレントゲン写真撮影による被曝線量に大きな違いはないという事です。従って、レントゲン写真撮影に対しては神経質になる必要性はありません。

 

歯科でよく行うレントゲン写真撮影 子供に対しての安全性

レントゲン写真撮影は大人に対して影響がほぼないと思いますが、子供に対してはどうでしょうか。子供の方が感受性が高いことが知られています。原爆の様な急性被爆(100ミリSv)をした場合、被爆の年齢が低いほど生涯のがんによる死亡リスクが高いという報告があります。しかし、歯科で用いるレントゲン写真撮影はその様な急性被ばくを起こすものではなく安全に使用できるものです。撮影する装置により部分的な撮影と顎全体を撮影するものなどがありますが、どれも被曝線量は少ないものです。レントゲンの写真を撮らないで治療を行う方が正確な診断ができず治療が上手く進まないリスクが上がると思われます。

 

まとめ

レントゲン写真撮影の基本を確認してきました。歯科で行う撮影は被曝線量が小さく、子供でも安全に行うことが可能です。写真を撮る場所に放射能はなく、エックス線発生装置があるだけなので誤解しない様に注意してください。また、放射線は体内に蓄積されるものではありません。1日に何度も撮影されて心配になる方もいるかもしれませんが、海外に飛行機で向かう方が被曝量は実際には多いことは説明した通りです。初回の診断、定期的な検診や状態確認において撮影する機会が多いと思います。レントゲン写真撮影をする利点が欠点を上回れば撮影をした方が患者さんにとってメリットが多いと思われます。

 



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